更新日:2018年04月03日
文化専修
受験生へのメッセージ(吉澤 弥生)
現代のアート作品やアートプロジェクト、あるいはアートかどうかもわからないモノやコトなど、同時代の表現全般を社会学の視点から考察しています。公共事業として行なわれる制作やプロジェクト(文化政策)から、グラフィティなど「反社会的」なもの(ストリートアート)まで、さまざまな表現を対象としています。
同時代のアートを生み出す人々の動きを調べるべく現場でフィールドワークをおこなうほか、2つのアートNPO法人のメンバーとして芸術文化に関するさまざまな実態調査にも携わっています。
講義では、同時代のアート作品やアートプロジェクトを、どのように生み出されどのように受容されているかという社会的背景とともに考察します。また、「アート」かどうかもわからない現代のさまざまな表現を(日本の事例だけでなく、世界各地の事例も)とりあげます。アートを楽しみながらこの時代におけるそれらの意味を真剣に考える、というプロセスを大事にしています。
ゼミでは、それぞれが関心をもった対象(アートを中心に同時代のさまざまな表現)について調べ発表します。発表後は全員でディスカッションをし、さまざまな視点や解釈を共有し、自身の考察を深めます。半年ごとにレポート提出が必須ですが、どの時点においても卒業論文執筆を念頭に置いた論文作成指導をおこないます。また、年に一度、学外実習としてアートプロジェクトの現場に飛び出しますので、お楽しみに。
まちなかや旅先で「アート」に出会った経験はありませんか?じつは今、アートが「アートのための場所」を飛び出し、昔学校だった建物や、商店街の空スペース、自然の中など、さまざまな場所で作られるようになっています。しかもそれらは、作家が一人で作るのではなく、さまざまな人が参加することで成り立つ作品やプロジェクトがほとんど。そして、こうした動きはアートが発表の場を求め外に飛び出したというだけでなく、社会の側からアートを必要とするようになった、という背景があります。いいかえれば地域、教育、福祉、医療、といった社会的文脈のもとで、アートが作り出され、受容されているのです。
そもそもの話、アートって何?なぜこれがアートなの????現代アートには、何だかもやもやとした「わからなさ」がついてまわりますね。でも確かなのは、それを「アート」とみなす上記のような社会的文脈があるということです。授業やゼミでは、そうしたさまざまな表現を、その生産と受容をめぐるプロセスとともに考察することで、社会の側がなぜアートを必要としているのか、また「アートって何?」「なぜこれがアートなの?」という問いに挑んでいきたいと思います。
なお、授業での試験やゼミのレポート作成に際しては、自分で現地に赴き資料を集めたり、調査を行なったりする必要がでてきます。現在進行中のモノやコトに関する文献や資料は多くないからです。簡単な作業ではありませんが、「なまのデータ」を自分で集めることで、予想(仮説)どおりだったという発見をしたり、思いもしなかった現実を目の当たりにしたりするでしょう。いずれにせよ、「関心あるテーマをとことん調べる」という体験は、大学だからこそできること。本学で、同時代の表現を同時代に考察するというスリリングな経験を楽しんでもらえたらと思います。
(単著)『芸術は社会を変えるか —文化生産の社会学からの接近』青弓社、2011 |
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(論文)「労働者としての芸術家たち —アートプロジェクトの現場から」、『文化経済学』第12巻第2号、2015 |
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(共著)「アートマネジメントと、非物質的労働の価値」、『芸術と労働』、白川昌生?杉田敦編、水声社、2018 |
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(共著)「アートNPOの展開と実態」、『文化政策の現在2 ー拡張する文化政策』第二巻、小林真理編、東京大学出版会、20 |
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(単独調査報告)『続々?若い芸術家たちの労働』、平成24?26年度科学研究費補助金基盤研究(C)「芸術労働の実態と制度に関する社会学的研究」報告書、2014 |
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(共同調査報告)『アートNPOデータバンク2016-17 アートNPOの基盤整備のためのリサーチ』、文化庁「平成28年 |
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(共同調査報告)『東京アートポイント計画2009- |