更新日:2020年12月01日
研究紹介
被服コンピュータ応用研究室の卒業研究を紹介します
被服コンピュータ応用研究室(古川 貴雄 教授)では、100年後のファッションをテーマにウェアラブルコンピューティングなどのテクノロジーを応用した研究に取り組んでいます。2020年度は、スマートアクセサリに関する研究や能動的に変形する衣服に関する研究を進めています。スマートアクセサリの研究は、3Dプリンタを応用した機能性被服材料開発の研究をされている被服材料学研究室(村瀬 浩貴 教授)と共同で実施しています。
現在、新型コロナ感染症の拡大を防止するために、密集?密接?密閉のいわゆる「3密」を避け、ソーシャルディスタンスを確保し、マスクを着用する「新しい生活様式」が求められています。「新しい生活様式」では、物理的な距離を確保して対面を避け、さらに、マスクで顔を覆うことにより、互いの表情や感情の変化を把握することが難しくなっています。そのため、人々の間に存在する心理的な距離を増大させるという弊害を生み出しているとも考えられます。
スマートアクセサリの研究では、マスクに隠された顔の表情によるコミュニケーションを補完するために、顔面の表情筋の筋電位を計測して可視化する方法について検討しています。図1(a)は、筋電センサを用いて眼輪筋の表面筋電位を計測している様子です。図1(b)の3Dプリンタで作成したパーツに多色発光LEDを組み込み、表情の変化に応じてカラフルに変化するイヤー型スマートアクセサリを制作する予定です。
また、ソーシャルディスタンスを確保して身体接触も避けることも、親密なコミュニケーションを阻害する要因となっています。そこで、身体接触も避けつつもボディタッチのような感覚を生成するために、赤外線距離センサの計測値を用いて空気圧アクチュエータを制御するシステムをもつ衣服の制作も進めています。図2は、赤外線距離センサと手のひらの距離で、空気圧アクチュエータを構成するDCモーターの回転制御をしています。手のひらが距離センサに近づくとモータの回転数が上昇して送り出される空気が増えることを確認しています。
被服学科では、伝統的な服飾文化の歴史から未来のファッションまで多岐に渡る教育研究を進めており、次世代を担う人材育成に取り組んでいます。
(a) 筋電計測 | (b) 3Dプリンタで作成したパーツ | (c) 多色発光LEDを用いたイヤー型アクセサリ試作 |
図1 スマートアクセサリの研究
(a) 赤外線距離センサと空気圧アクチュエータのシステム | (b) 赤外線距離センサを使用した空気圧アクチュエータの制御実験 |
図2 遠隔でボディタッチのような感覚を生成するシステムの試作